「獣医師は国家資格だから、年収は高い」
そんなイメージを持っている方も多いかもしれません。
ですが実際には、獣医師の年収は職種や働き方によって大きく差が出るのが現実です。
同じ獣医師でも、動物病院で働くのか、産業動物に関わるのか、企業や公務員として働くのかで、年収の伸び方はまったく違ってきます。
「獣医の年収は低い」と言われる理由も、単純に給与水準が低いからではありません。
そこには、どこから収入が生まれ、どう分配されるのかという“構造的な背景”があります。
この記事では、
- 獣医師の平均年収・中央値
- 職種別に年収がどう決まり、どう伸びるのか
- なぜ高くなる人と、伸びにくい人が分かれるのか
といった点を、数字の羅列ではなく「仕組み」から丁寧に解説していきます。
なお、獣医師の働き方やキャリアパス全体については、別記事で詳しく整理しています。
本記事ではあくまで、「獣医師の年収」に焦点を絞り、現実的なお金の話をしていきます。
獣医師の仕事内容や働き方の違いを詳しく知りたい方は、
獣医師の働き方とキャリアパスの種類を徹底解説も参考にしてください。
これから獣医を目指す学生の方、今の働き方や将来の収入に不安を感じているミドル世代の方にとって、自分に合った選択を考えるための材料になれば幸いです。
獣医師の年収の基本データ|平均・中央値と「低く見える理由」
獣医師の年収について調べると、「思っていたより低い」と感じる人は少なくありません。
その印象は、単なるイメージの問題ではなく、数字の見え方と構造のズレから生まれています。
ここではまず、平均年収と中央値を整理したうえで、
なぜ獣医師の年収が低く見えやすいのかを解説します。
獣医師の平均年収と中央値の目安
公的統計をもとにすると、獣医師の平均年収はおおよそ600万円台とされています。
国家資格を持つ専門職として見ると、「高くも低くもない」と感じる水準かもしれません。
一方で、中央値に目を向けると、平均よりもやや低い水準になります。
これは、一部の高年収層が平均値を押し上げているためです。
つまり、
- ごく一部に年収が高い獣医師がいる
- その一方で、多くの獣医師は平均より下のレンジに集まっている
この構造が、「平均年収だけを見ると実態が見えにくい」理由です。
獣医師の年収が「低い」と感じられやすい構造
検索すると「獣医 年収 低い」という言葉が出てくるのも、偶然ではありません。
獣医師の年収が低く感じられやすい背景には、いくつかの構造的な要因があります。
ひとつは、比較対象の問題です。
獣医師は医師や歯科医師と並べて語られることが多く、その結果、期待値が高くなりがちです。
しかし、収益構造や働き方は大きく異なります。
もうひとつは、昇給カーブが緩やかな職種が多いという点です。
年齢を重ねれば自動的に大きく年収が伸びる、という仕組みではないため、30代後半から40代にかけて「伸び悩み」を感じる人が増えてきます。
この段階で「獣医師の年収は低い」という印象を持つ人が多いのが実情です。
職業別に見る獣医師の年収の仕組み
獣医師の年収は、「経験年数」や「スキル」だけで決まるものではありません。
実際には、どの分野・どの立場で働いているかによって、収入の決まり方そのものが大きく異なります。
同じ獣医師であっても、
動物病院、産業分野、公務員、企業、研究職、開業といった選択肢ごとに、お金が生まれる仕組みや、年収が伸びるタイミングはまったく違います。
ここでは、仕事内容や向き不向きには触れず、
「なぜこの職業だと、この年収帯になりやすいのか」
という視点から、職業別に年収の構造を整理していきます。
アキヒロ「自分の経験や強みが、どの年収の決まり方に近いのか分からない…」という場合は、無料で自分の強みや傾向を整理できる診断を使ってみるのも一つの方法です。
まずは、多くの人がイメージしやすい
動物病院で働く獣医師の年収から見ていきましょう。


動物病院で働く獣医師の年収(雇われ獣医)
獣医師の年収を調べたとき、もっとも多くの人が思い浮かべるのが「動物病院で働く獣医師」ではないでしょうか。
実際、獣医師の就職先として動物病院は依然として多数派であり、「獣医 年収」という検索結果の印象も、この分野が基準になりがちです。
動物病院で働く獣医師の年収は、全体平均よりやや低く見えやすい傾向があります。
目安としては、おおよそ400万円〜700万円前後に収まるケースが多いです。
ただしこれは、能力や努力の問題というより、病院という組織の収益構造に大きく左右されています。
動物病院の収入源は、基本的に「診療単価 × 来院数」に限られます。
人医療のように公的保険で診療報酬が担保されているわけではなく、診療内容や地域の価格感覚によって売上は大きく変動します。
その中で人件費に割ける割合は限られており、勤務獣医師の給与も、病院全体の売上規模に強く依存します。
どれだけ経験を積んでも、病院の規模や経営状態が変わらなければ、年収が大きく跳ね上がることは難しいのが現実です。
特に雇われ獣医師の場合、
- 若手のうちは横並びの給与水準になりやすい
- 経験年数が増えても昇給幅は緩やか
- ある程度のところで年収の天井が見えてくる
という構造になりやすく、「雇われ 獣医 年収」で検索される背景にもなっています。
また、動物病院の年収は地域差が出やすい分野でもあります。
都市部では診療単価を上げやすい一方で、競争が激しく人件費も高くなりがちです。
地方では獣医師不足の地域もありますが、飼い主の価格感覚や来院数の制約から、必ずしも高年収につながるとは限りません。
このように、動物病院で働く獣医師の年収は、
- 個人のスキル
- 努力ややりがい
だけで決まるものではなく、
「病院の経営構造」「雇用形態」「地域条件」の影響を強く受けています。
年収が伸び悩むからといって、獣医師としての価値が低いわけではありません。
どの立場で、どの構造の中で働いているかによって、見え方が変わっているだけです。
開業している獣医師の年収
ここで扱うのは、動物病院で「働く獣医師」ではなく、
動物病院を経営する立場の獣医師の年収です。
開業獣医師の年収は、雇われ獣医とは決まり方がまったく異なります。
給与ではなく、病院の利益からどれだけを手元に残せるかで年収が決まるため、上限がありません。
そのため、「獣医 年収 3000万」「獣医 年収 高い」といった検索が出てくるのも、この層です。
実際、経営が軌道に乗った動物病院では、年収が大きく跳ね上がるケースもあります。
目安としては、年収600万円前後にとどまるケースから、1,000万円超に届くケースまで幅があり、
ごく一部では2,000万円以上に達する例もあります。
ただし重要なのは、
売上=年収ではないという点です。
開業直後は、次のような固定費と返済が重くのしかかります。
- 開業資金や設備投資のローン返済
- テナント料や建物維持費
- スタッフの人件費
- 医薬品・消耗品などの仕入れコスト
売上が立っていても、これらを差し引いた「利益」が残らなければ、経営者である獣医師の年収は思ったほど増えません。
また、開業獣医師の年収には振れ幅が非常に大きいという特徴があります。
- 開業しても年収が勤務医と大きく変わらないケース
- 数年かけて徐々に利益が積み上がるケース
- 分院展開などで高年収に到達するケース
この差は、診療スキルそのものよりも、
立地、患者数、価格設定、スタッフ体制、経営判断といった要素に左右されます。
つまり、開業した瞬間に年収が上がるわけではなく、
経営者としての構造に乗れたかどうかで結果が大きく変わります。
検索で目にする「高年収」の数字は、あくまで一部の成功例が切り取られたものです。
その裏側には、初期投資の負担や、安定するまでの時間があることも理解しておく必要があります。
開業獣医師の年収が高く見えるのは、努力の結果というよりも、収入の仕組み自体が給与制ではないからです。
雇われ獣医とは、同じ「動物病院」という場にいながら、まったく別の年収モデルで動いていると言えます。
製薬会社・企業で働く獣医師の年収
製薬会社や関連企業で働く獣医師の年収は、
動物病院や開業医とは異なり、企業の給与テーブルに基づいて決まるのが特徴です。
この分野では、獣医師免許を持っていること自体が直接的に給与へ反映されるわけではありません。
あくまで、企業内での職位・等級・評価制度によって年収が決まります。
そのため、個人の診療件数や売上ではなく、在籍年数や役割の変化に応じて、
**段階的に年収が積み上がっていく「昇給テーブル型」**の構造になります。
実体験としても、
国内製薬企業では管理職クラスで年収1,000万円弱、
外資系製薬企業では1,200万円前後がひとつの目安でした。



実際に勤務していた国内製薬企業では、年収水準は業界内では高い方ではありませんでしたが、昇給や退職金を含めた長期的な収入の見通しが立てやすい点は大きな安心材料でした。
この年収水準は、短期間で一気に跳ね上がるものではありません。
一方で、昇給が比較的安定しており、大きく下がりにくいという特徴があります。
さらに、製薬会社で長期的に勤務した場合、退職金を含めた生涯年収が高くなりやすい点も見逃せません。
新卒から定年退職まで勤め上げた場合、
退職金は2,000万円〜5,000万円程度になるケースもあり、
現役時代の年収と合わせて考えると、
他職種と比べて総合的な収入水準はかなり高いと言えます。
重要なのは、この年収モデルが「資格職だから高い」のではないという点です。
製薬会社・企業で働く獣医師の年収は、組織の仕組みの中で設計された報酬体系によって成り立っています。
そのため、
- 大きく跳ねることは少ない
- しかし長期的に見ると安定して高水準
という、積み上げ型・安定型の年収モデルになります。
もうひとつ、年収の数字だけでは見えにくいポイントがあります。
それが、金融面での信用力です。
大手企業に勤めている場合や、公務員として働いている場合、
収入の安定性が高いと評価されやすく、
住宅ローンなどの銀行融資を受けやすい傾向があります。
また、金融機関によっては、勤務先や雇用形態に応じて、一般には公表されていない優遇金利が適用されるケースもあります。
これは「年収が高いから」というより、将来にわたって収入が途切れにくいと判断されることが理由です。
結果として、
同じ年収でも、
- 借入できる金額
- 金利条件
- 返済計画の立てやすさ
に差が出ることがあります。
製薬会社や公務員の年収が「安定して強い」と言われる背景には、こうしたお金の借りやすさまで含めた構造も影響しています。
公務員として働く獣医師の年収
公務員として働く獣医師の年収は、
製薬会社などの企業と同様に、給与表に基づいて決まる年功序列型のモデルです。
※ここでいう公務員獣医師には、自治体や国の機関で働く獣医師(NOSAI、検疫・防疫関連業務など)が含まれます。
この分野では、
成果や売上によって年収が大きく変動することは少なく、
在職年数と役職の段階に応じて、徐々に収入が積み上がっていきます。
目安としては、年収500万円前後からスタートし、勤続や役職に応じて700万円〜800万円前後に到達するケースが多く見られます。
検索されやすい「公務員 獣医 年収」「nosai 獣医 年収」「検疫官 獣医 年収」
といった立場はいずれも、急激な年収上昇はない一方で、下振れしにくいという共通点があります。
若手のうちは、
民間企業や開業獣医と比べて
年収が控えめに感じられることもあります。
しかし、勤続年数を重ねることで、
安定的に一定水準まで到達しやすいのが公務員獣医の特徴です。
また、公務員としての年収の強みは、
月々の給与額だけではありません。
- 雇用の安定性が高い
- 収入の見通しが立てやすい
- 退職金まで含めた生涯年収が読みやすい
といった点が、長期的な安心感につながります。
さらに、公務員という立場は、
金融機関からの信用評価が高く、
住宅ローンなどの融資を受けやすい傾向があります。
金利条件の面でも、安定した雇用がプラスに評価されるケースが少なくありません。
一方で、公務員獣医師の年収には明確な上限があります。
給与表の枠を超えて大きく伸ばすことは難しく、「年収を一気に上げたい」という人に向いたモデルではありません。
公務員として働く獣医師の年収は、
- 高く跳ねることはない
- しかし大きく崩れることもない
という、堅実で読みやすい構造を持っています。
そのため、
収入の安定性や生活設計のしやすさを重視する人にとっては、
非常に相性の良い年収モデルと言えるでしょう。
産業動物・家畜分野で働く獣医師の年収
産業動物・家畜分野で働く獣医師の年収は、
動物病院や企業、公務員とは異なり、需要と契約を軸に決まる年収モデルです。
この分野では、
診療件数や所属組織の給与表ではなく、
「どの地域で、どれだけ必要とされているか」が収入に強く影響します。
目安としては、年収500万円〜800万円前後が中心で、
経験や担当範囲、地域によっては900万円前後に届くケースもあります。
家畜獣医師の年収に差が出やすい理由のひとつが、
地域ごとの畜産規模と人手不足です。
特に、畜産が盛んな地域では獣医師の確保が課題となっており、
需要の高さが年収水準に反映されやすくなります。
また、産業獣医の年収は、
契約形態の違いによっても大きく変わります。
- 農場や団体との継続契約
- 複数農場を担当する形
- 経験や専門性を評価された条件設定
といった要素が重なり、
同じ「家畜 獣医 年収」という検索語でも、
実際のレンジには幅があります。
この分野の特徴は、
若手のうちは年収が伸びにくい一方で、
経験を積むほど評価が収入に反映されやすい点です。
疾病管理や衛生対策など、
現場での判断力が問われる領域では、
経験値そのものが価値になります。
その結果、ミドル世代以降で
年収に差がつきやすくなります。
一方で、産業動物分野の年収は、
企業や公務員のように
「毎年決まったペースで上がる」わけではありません。
需要が高い地域では比較的高水準になることもありますが、
地域や契約条件によっては思ったほど年収が上がらないケースもあります。
つまり、産業獣医の年収は、
- 高くなる可能性もある
- しかし安定して保証されるものではない
という、需要依存型・地域依存型の構造を持っています。
この点が、
「獣医 年収 高い」「獣医 年収 低い」と
評価が分かれやすい理由のひとつです。
産業動物・家畜分野で働く獣医師の年収は、
資格そのものよりも、地域・経験・契約条件の組み合わせによって決まるモデルだと言えるでしょう。
研究職として働く獣医師の年収
研究職として働く獣医師の年収は、
動物病院や開業医とは異なり、所属機関の給与体系と雇用形態に大きく左右されます。
大学や研究機関、企業の研究部門など、
研究職の働き方は多様ですが、共通しているのは、
診療件数や売上ではなく、職位・任期・評価制度によって年収が決まる点です。
目安としては、
年収400万円〜700万円前後が中心となり、
企業研究職や上位職位では800万円前後に届くケースもあります。
ただし、研究職の年収が伸びにくいと感じられる背景には、
任期制やポストの限られた構造があります。
特に大学や公的研究機関では、任期付きポジションが多く、
長期的な昇給や年収アップが見えにくい場合があります。
また、研究成果が直接収益に結びつくわけではないため、臨床や企業職と比べて、
年収が成果連動型になりにくいという特徴もあります。
一方で、研究職は、
- 専門性を深められる
- 学術的な価値を追求できる
- 社会的意義の大きいテーマに関われる
といった、年収とは別の軸での魅力を持つ働き方でもあります。
研究職として働く獣医師の年収は、
高く跳ねるモデルではありませんが、
専門性とやりがいを重視する人に向いた構造だと言えるでしょう。
動物園・水族館で働く獣医師の年収
動物園や水族館で働く獣医師の年収は、
獣医師の中でも特殊で限られた働き方に位置づけられます。
この分野では、
年収は診療件数や個人の売上ではなく、
施設の運営母体(自治体・公益法人・民間企業)と雇用条件によって決まります。
目安としては、
年収400万円〜600万円前後が中心となり、
役職や勤続年数によっては700万円前後に達するケースもあります。
ただし、動物園・水族館獣医師の年収は、
高収入を目的としたモデルではありません。
求人自体が少なく、欠員が出ない限り新規採用がほとんどないため、競争率が非常に高いのが現実です。
また、施設ごとの予算規模や運営方針によって、昇給ペースや上限にも差が出やすく、年収が大きく伸びる構造ではありません。
その一方で、
- 希少動物や展示動物の健康管理に関われる
- 教育・保全といった社会的役割が大きい
- 一般臨床とは異なる専門経験を積める
といった、年収以外の価値が非常に大きい分野です。
動物園・水族館で働く獣医師の年収は、金額の高さよりも、
「どんな仕事に人生の時間を使いたいか」を重視する人向けのモデルだと言えるでしょう。
まとめ
獣医師の年収は、「国家資格だから一律に高い」「経験を積めば自然に上がる」といった単純なものではありません。
実際には、どの職種・どの立場で働いているかによって、年収の水準や伸び方は大きく異なります。
動物病院で働く雇われ獣医師、開業して病院を経営する獣医師、製薬会社などの企業に勤める獣医師、公務員として働く獣医師、産業動物分野や研究職、動物園・水族館で働く獣医師まで、
同じ「獣医師」という資格を持っていても、年収はそれぞれ異なる仕組みの上に成り立っています。
年収が「低い」「高い」と感じられる背景には、個人の能力や努力だけでなく、給与の決まり方、収益構造、雇用形態、地域性といった要素が複雑に関わっています。
この記事では、獣医師の年収を単なる数字として並べるのではなく、なぜその年収水準になるのか、なぜ職種によって差が生まれるのかという構造に焦点を当てて整理しました。
獣医師の年収を正しく理解するためには、「平均はいくらか」だけを見るのではなく、どの仕組みの中で働いているのかまで含めて捉えることが重要です。
年収の数字は、働き方や立場を映すひとつの結果にすぎません。
獣医師という仕事の年収を考える際には、その裏側にある仕組みを知ることが、冷静な理解につながります。

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