私は現在、畜産臨床獣医師として働く傍ら、副業でキャリア相談を行っています。
「なぜ獣医師がキャリア相談をしているのですか?」
そう聞かれることがあります。
確かに、一見すると獣医師とキャリア相談は関係のない仕事に見えるかもしれません。
しかし私は、内資系・外資系の製薬会社で20年以上働いた後、45歳で未経験の畜産臨床獣医へ転職しました。その過程では、転職の不安や挫折、将来への迷いも経験しています。
そして振り返ってみると、当時の私に足りなかったのは能力や経験ではなく、「自分が何を大切にしたいのか」を整理することだったように思います。
現在、キャリア相談を行っているのも、その経験があるからです。
この記事では、私自身のキャリアの歩みを振り返りながら、なぜ副業でキャリア相談を始めたのか、そしてなぜ「キャリア整理」を大切にしているのかをお話ししたいと思います。
私自身、長い間キャリアに迷っていた
現在は畜産臨床獣医師として働きながらキャリア相談も行っていますが、実は私は長い間、自分のキャリアに迷い続けていました。
「獣医師になれたのだから順調だったのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし振り返ってみると、私は社会人になってから20年以上、自分が本当に何をしたいのか分からないまま働いていた時期がありました。
獣医師になったものの、目標を見失った
私が獣医師を目指したきっかけは、子どもの頃に飼っていた犬を病気で亡くしたことでした。
「獣医になって、その病気を治す方法を作りたい」
そんな思いを胸に受験勉強に取り組み、念願だった獣医学部に進学しました。
ところが入学して間もなく、その病気にはすでにワクチンも治療法も存在することを知ります。
夢だった目標が、大学生活の早い段階でなくなってしまったのです。
もちろん獣医学の勉強は続けましたが、「自分は何のために獣医師になるのか」という問いに向き合わないまま学生生活を過ごすことになりました。
製薬会社で20年以上働いても答えは見つからなかった
大学卒業後は、獣医師資格を活かして製薬会社へ就職しました。
内資系製薬会社で19年、その後外資系製薬会社で3年勤務し、製造・開発・営業支援・事業推進・マネジメントなど幅広い業務を経験しました。
仕事を通じて多くのことを学びましたし、輸出プロジェクトの立ち上げなど、自ら希望して挑戦した仕事もあります。
しかし一方で、
「自分は本当に何をしたいのか」
「このまま今の仕事を続けていて良いのか」
という迷いは、ずっと心のどこかに残っていました。
部署が変われば解決すると思ったこともあります。
新しい仕事に挑戦すれば変わると思ったこともあります。
ですが、そのたびに一時的な充実感は得られても、しばらくすると同じ悩みに戻ってしまうのです。

今振り返ると、私は仕事の問題を解決しようとしていたのではなく、自分自身の考えや価値観を整理できていなかったのだと思います。
転機となった挑戦と挫折
製薬会社で働き続ける中で、ずっと迷い続けていたわけではありません。
「これが自分のやりたい仕事かもしれない」
そう思える瞬間もありました。
しかし、その挑戦は思い通りには進まず、大きな挫折も経験することになります。
輸出プロジェクトとの出会い
社会人になってしばらくした頃、私は趣味でマジックショーの企画・運営に取り組んでいました。
劇場を借り、出演者を集め、宣伝を行い、多くの人の協力を得ながらイベントを成功させた経験は、それまでの私にとって大きな自信になりました。
「自分にも企画や立ち上げができるかもしれない」
そう感じるようになった私は、当時まだ社内で十分に取り組まれていなかった輸出業務に興味を持ち、自ら手を挙げて輸出プロジェクトに参加しました。
それは社会人になって初めて、自分の意志でつかみにいった仕事だったように思います。
未知の業務を学びながら、海外展開の可能性を探る日々は刺激的で、ようやく自分の進む方向が見えてきたような気がしていました。


M&Aで状況は大きく変わった
しかし、会社のM&Aによって状況は大きく変わります。
会社の方針や事業戦略が変わり、輸出プロジェクトを取り巻く環境も大きく変化しました。
もちろん私自身もできる限りの調整や提案を行いましたが、個人の努力だけではどうにもならない壁があります。
長い時間をかけて取り組んできた仕事が思うような形にならず、
「この会社で自分ができることは、もうないのかもしれない」
そう感じるようになりました。
そして私は、19年間勤めた内資系製薬会社を離れる決断をします。
外資系製薬会社への転職
次の挑戦の場として選んだのが外資系製薬会社でした。
製造、開発、営業支援、事業推進など、それまで積み重ねてきた経験を評価していただき、事業部長として迎えられることになりました。
当時は、
「これまでの経験を活かしながら、さらに成長できるかもしれない」
という期待もありました。
しかし現実は、私が想像していた以上に厳しいものでした。
降格を経験して気づいたこと
私はそれまで本格的な管理職経験がほとんどありませんでした。
その状態で事業部長という立場を任されたことで、大きなプレッシャーを抱えることになります。
期待に応えたいという思いが強い一方で、思うように成果を出せず、次第に心身ともに追い込まれていきました。
頭痛や腹痛を抱えながら出社する日もありました。
最終的には役職を下げて再スタートすることになりましたが、自分の中では大きな挫折でした。
当時は、
「自分には能力が足りなかった」
と思っていました。
しかし今振り返ると、能力だけの問題ではなかったように思います。
自分が何を大切にしたいのか。
どんな働き方が合っているのか。
どんな役割なら力を発揮できるのか。
そうしたことを十分に整理できないまま、新しい環境に飛び込んでしまった部分もあったのです。
45歳で未経験転職を決意
外資系製薬会社を退職した後、私はこれからの働き方を真剣に考えることになりました。
収入や肩書きを優先するなら、再び製薬業界へ戻るという選択肢もありました。
実際、転職エージェントから紹介される求人の多くも製薬業界の仕事でした。
しかし、私の中にはずっと引っかかっている思いがありました。
「会社を変えても、また同じ悩みを繰り返すのではないか」
これまでの経験を振り返ったとき、私は初めて「自分が本当にやりたいことは何なのか」を考え始めました。
畜産臨床獣医への挑戦
そこで思い浮かんだのが、獣医師として働くという選択肢でした。
獣医師免許は持っていましたが、卒業後は製薬会社へ進んだため、臨床経験はありません。
いわゆる「ペーパー獣医師」です。
それでも、
「せっかく持っている資格を活かしてみたい」
「一度は現場で動物と向き合う仕事をしてみたい」
という気持ちが強くなっていきました。
数ある選択肢の中から畜産臨床獣医を選んだのは、人手不足の分野で比較的挑戦の余地があると感じたこと、そして私自身が興味を持てたことが理由です。
もちろん不安はありました。
45歳、未経験、臨床経験なし。
一般的に考えれば、決して有利な条件ではありません。
それでも私は、この道に挑戦してみたいと思いました。
現実は門前払いの連続だった
しかし、現実は甘くありませんでした。
求人に応募しても、
「経験者を募集しています」
「未経験では難しいですね」
と断られることも少なくありませんでした。
年齢の壁もあり、思うように話が進まないこともありました。
転職エージェントに相談しても、
「それだけの経験があるなら製薬業界に戻った方がいい」
と言われることがほとんどです。
確かに、それは合理的な提案だったと思います。
ですが私の中では、
「また同じ環境に戻れば、同じ悩みを繰り返すのではないか」
という思いが消えませんでした。
だからこそ、簡単に諦めることはできませんでした。




採用されたのは経験ではなく姿勢だった
応募を続ける中で、私はあることを意識するようになりました。
それは、自分を大きく見せないことです。
未経験であることは隠せません。
むしろ正直に認めた上で、
「ゼロから学ぶ覚悟があること」
「なぜこの仕事に挑戦したいのか」
を丁寧に伝えるようにしました。
その結果、ある牧場が私の思いを受け止めてくださり、畜産臨床獣医として採用していただくことになりました。
もちろん採用された瞬間に不安が消えたわけではありません。
むしろそこからが本当のスタートでした。
それでも私は、
「ようやく自分で選んだ道を歩き始められる」
そんな気持ちで新しいキャリアへの一歩を踏み出しました。
転職後に気づいたこと
45歳で未経験の畜産臨床獣医になったからといって、すべての悩みが一気に解決したわけではありません。
もちろん、慣れない仕事に苦労することもありましたし、学ばなければならないことも山ほどありました。
それでも、不思議と以前のような迷いはありませんでした。
なぜだろうと振り返ったとき、私はあることに気づきました。
能力不足ではなかった
外資系製薬会社で降格したとき、私は「自分には能力が足りなかった」と考えていました。
転職活動で門前払いが続いたときも、「年齢や経験が足りないからだ」と思っていました。
しかし、畜産臨床獣医として働き始めてから感じたのは、能力だけでキャリアが決まるわけではないということです。
実際、製薬会社時代に身につけた経験や知識、課題解決力、人との関わり方は、新しい仕事でも活かされていました。
もちろん業界も仕事内容も違います。
それでも、これまでの経験が無駄になったわけではありませんでした。
もし本当に能力不足だったのなら、新しい環境でも成果を出すことはできなかったはずです。
そう考えると、私が長年苦しんでいた原因は別のところにあったのかもしれません。
足りなかったのは「整理」だった
今振り返ると、私は長い間、
「どんな仕事なら自分が力を発揮できるのか」
「何を大切にして働きたいのか」
「どんな人生を送りたいのか」
を十分に整理できていませんでした。
だから、
仕事が合わない
↓
部署を変える
環境が合わない
↓
会社を変える
という発想になりがちでした。
しかし、本当に必要だったのは環境を変えることではなく、自分自身を理解することだったのです。
畜産臨床獣医への転職がうまくいったのも、たまたま運が良かったからではありません。
転職活動を通して、
「自分は何をしたいのか」
「何を大切にしたいのか」
を真剣に考えた結果だったのだと思います。




なぜキャリア相談を始めたのか
畜産臨床獣医として働き始めてから、私はようやく「自分に合う仕事」に出会えたと感じるようになりました。
もちろん大変なこともありますが、毎日の仕事の中で成長を実感できることや、畜産という形で社会を支えている実感は大きなやりがいになっています。
一方で、ふとこんなことを考えるようになりました。
「もしもっと早く自分に合う働き方に気づいていたら、人生は違っていたのだろうか」
そして同時に、
「同じように悩んでいる人がたくさんいるのではないか」
とも思うようになったのです。
座談会や相談活動を始めた
そんな思いから、さまざまな業界や職種の方と交流する機会を増やし、キャリアについて語り合う座談会や相談活動を始めました。
転職を考えている人。
今の仕事に違和感を抱いている人。
将来への不安を抱えている人。
年齢や職種は違っていても、多くの人がキャリアに悩みを抱えていました。
私は自分自身の経験をお話ししながら、その人たちの話を聞くようになりました。
多くの人に共通する悩みがあった
相談を重ねる中で、ある共通点が見えてきました。
それは、
「能力が足りないから動けない」
のではなく、
「自分が何を大切にしたいのか整理できていない」
ために動けなくなっている人が非常に多いということです。
転職したいのか分からない。
今の仕事を続けるべきか分からない。
やりたいことが分からない。
強みが分からない。
私自身が長年抱えていた悩みと、とてもよく似ていました。
だからこそ私は、求人情報や面接対策よりも先に、
「まず頭の中を整理することが大切なのではないか」
と考えるようになりました。


キャリアコンサルタントの資格を取得した
相談活動を続ける中で、
「経験だけでなく、理論的にもキャリア支援を学びたい」
と思うようになりました。
そこでキャリアコンサルタント養成講座で学び、国家資格キャリアコンサルタントを取得しました。
資格を取得したことで、私自身の経験とキャリア理論を結びつけて考えられるようになりました。
ただ、資格を取ったから相談を始めたわけではありません。
順番としては逆です。
先に多くの方の話を聞き、自分自身の経験を伝える中で、
「もっと体系的に学びたい」
と思った結果として資格取得につながりました。
現在も畜産臨床獣医として働きながらキャリア相談を続けているのは、働く現場から離れずにいたいからです。
現場で働く悩みや迷いを知っているからこそ、相談者の気持ちに寄り添えると考えています。
私が支援したいこと
ここまでお話ししてきたように、私自身は長い間キャリアに迷い続けてきました。
製薬会社で20年以上働き、転職も経験し、45歳で未経験の仕事にも挑戦しました。
その経験を通じて感じるのは、キャリアの悩みには「正解探し」では解決できないものが多いということです。
だからこそ、現在のキャリア相談では転職テクニックを教えることよりも、まずはその人自身の考えを整理することを大切にしています。
転職支援ではなく「整理支援」
私の相談に来られる方の中には、
「転職したい」
と言う方もいれば、
「転職すべきか分からない」
という方もいます。
中には、
「今の仕事を続けた方が良いのかもしれない」
という方もいます。
そのため私は、最初から転職を勧めることはありません。
転職はあくまで選択肢の一つです。
大切なのは、
「なぜ転職したいのか」
「本当に環境を変える必要があるのか」
を整理することだと考えています。
場合によっては、転職しないという結論になることもあります。
それでも本人が納得して決めた結論なら、それは良い選択だと思っています。


強みを整理する
キャリアに悩んでいる方の多くが、
「自分には強みがない」
と感じています。
しかし実際には、強みがないのではなく、自分で気づいていないことがほとんどです。
私自身も長い間、自分の強みをうまく言葉にできませんでした。
だからこそ、
これまでどんな経験をしてきたのか
どんな場面で力を発揮してきたのか
を一緒に整理しながら、その人ならではの強みを見つけていきます。


価値観を整理する
キャリアの悩みは、仕事そのものの問題ではなく、価値観の問題であることも少なくありません。
収入を重視したいのか。
やりがいを重視したいのか。
家族との時間を大切にしたいのか。
安定を求めたいのか。
人によって大切にしたいものは違います。
だから私は、一般論の正解ではなく、その人自身が大切にしたい価値観を整理することを重視しています。
自分らしい方向性を見つける
キャリア相談の目的は、転職先を決めることではありません。
その人が納得できる方向性を見つけることです。
転職する。
今の会社に残る。
副業を始める。
学び直しをする。
選択肢は人それぞれです。
大切なのは、他人の正解ではなく、自分自身が納得できる道を選ぶことだと思っています。
私自身、多くの遠回りや失敗を経験してきました。
だからこそ、同じように悩んでいる方が自分らしい選択を見つけるお手伝いができればと思っています。




まとめ|まずは頭の中を整理することから
私はこれまで、製薬会社で20年以上働き、外資系製薬会社への転職、降格、退職、そして45歳での未経験転職を経験してきました。
振り返ってみると、当時の私は「能力が足りない」「経験が足りない」と考えていました。
しかし本当に足りなかったのは、自分自身を理解するための整理だったように思います。
何を大切にしたいのか。
どんな働き方をしたいのか。
どんな人生を送りたいのか。
それらが整理できていなければ、転職しても、部署を変えても、同じ悩みを繰り返してしまうかもしれません。
逆に、自分の強みや価値観、これからの方向性が見えてくると、選択肢の見え方も変わってきます。
転職することが正解とは限りません。
今の仕事を続けることが正解の場合もあります。
大切なのは、他人の正解ではなく、自分自身が納得できる選択をすることです。
もし今、
「このままで良いのだろうか」
「転職した方が良いのだろうか」
「何から考えれば良いのか分からない」
そんな悩みを抱えているなら、まずは頭の中を整理することから始めてみませんか。
私自身が長い間遠回りをしてきたからこそ、そのお手伝いができればと思っています。


私自身、キャリアの答えを見つけられなかった期間が20年以上ありました。
だからこそ今は、「すぐに転職すること」ではなく、「まず頭の中を整理すること」が何より大切だと考えています。
一人で考えていると、同じところを何度も行き来してしまうことがあります。そんな時は、第三者と話すことで見えてくることも少なくありません。



もし今、キャリアについて迷いや不安を感じているなら、一度頭の中を整理してみませんか。
私自身の経験と、キャリアコンサルタントとしての知識をもとに、あなたが納得できる次の一歩を一緒に考えるお手伝いをします。



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